新聞コラム最終回 ポスト・コロナへ向けて

昨年から執筆を担当させて頂いた、沖縄タイムス「ニュースナビプラス」の連載が、今回で最終回となりました。

「気になるニュースを取り上げ、分析・深掘りして論ずる」という縛りがあったため、好き勝手なテーマで書けず本当に苦労しました。とはいえ、おかげで年がら年中、あらゆる報道にアンテナを張り続けることが出来たので、とても勉強になりました。

最後はぜひとも、沖縄観光の明るい未来を展望する内容にしたかったのですが(特に、「やんばる」は、世界自然遺産登録や北部テーマパークなど明るい好材料も控えているからね)、このたびの世界的なコロナ・ショックの影響で、そうそう能天気な事を書いてもいられなくなったのが残念です。

 

■沖縄タイムス ニュースナビプラス 2020年3月25日掲載

「コロナショック終息後~分散化と生産性念頭に」

那覇市内ホテル従業員感染による同ホテルの積極的な情報公開は、感染拡大を最小限にとどめると同時に、県民・消費者の不安や風評被害を抑えることにもつながり、評価に値すると思う。

業界はこれまで以上に気を引き締め、ウイルス感染防止対策の徹底に努めよう。現時点では出口が見えない「コロナショック」だが、終息後を見据えた準備を怠ってはならない。

日本旅行業協会(JATA)は7~9月期の予測DI値で、海外・国内・訪日旅行全てにおいて全体的に回復傾向を見込んでいる。とはいえ、国内の感染が終息しても、世界各国の状況次第では、訪日観光客数が以前の規模に回復するまでに要する時間は不透明である。

「ポスト・コロナ」に向け、私たちが準備すべきは、国内・県内消費の促進だ。日本人の国内旅行需要は21兆円もあり、県内の観光消費額7793億円のうち、814億円は県民による消費額。政府の緊急経済対策で、飲食業・観光業に重点支援が検討されていることは心強い。終息後に同規模の需要回復を促す消費マインド喚起に向けて、大胆で迅速な施策を求めたい。

国内全体の旅行需要が回復した時に、目的地として真っ先に沖縄が選ばれるための魅力創出と誘客強化、観光産業の体質強化が急がれる。その際に念頭に置きたいのは「分散化」と「生産性」だ。

今回はインバウンド比率の高い企業・施設ほど影響も甚大だ。沖縄へ誘客する国内と海外の比率については、常に注意を払う必要があり、特定の国やエリアに偏りすぎないマーケットの分散化を肝に銘じたい。観光客が激減している今こそ、沖縄におけるオーバーツーリズム問題を定義し、ゾーニングやエリア・時間の分散化など対策の議論を深めてはどうか。

企業は、生産性を高めるための努力も必要だ。いずれ需要が戻った時に備え、オペレーションや働き方の見直し、商品・サービスの改善、デジタル活用など閑散期にこそじっくり取り組めることも多い。過度な価格競争に陥り、業界全体が疲弊することも避けたい。消費が回復した時に、適正利益を残すためには生産性の高い体制を整えていることが鍵となる。

既に雇用調整の問題も顕在化しているが、危機が収束したらすぐにまた人手不足問題も浮上する。国や行政、金融機関などのあらゆる支援策を駆使して、事業の継続と雇用の維持に努めたい。

沖縄はこれまでも、何度も苦境を乗り越えてきた。リゾート地としての優位性も変わらない。今度も必ず乗り越えられる。明日はいよいよ、那覇空港第2滑走路の供用開始だ。

※写真は昨年秋に、那覇空港上空から撮影。瀬長島の奥に、建設中の第二滑走路が見えています

新聞コラム第11回目 沖縄観光ITで飛躍を

ニュースナビプラスを書くのも、残すところあと1回のみ!毎月のネタ探し、情報収集、取材の苦労もあと1回!!

新型コロナが世界中を震撼させ、沖縄観光も大きな打撃を受けています。でも、頑張りましょう!!

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沖縄タイムスニュースナビプラス 2020年2月26日掲載

「リゾテック国際見本市 沖縄観光ITで飛躍を」

それはとても不思議な感覚だった。私の身体はコンベンションセンターに在るのに、意識は美ら海水族館で魚の群れを楽しみ、次の瞬間には、恩納村のラグジュアリーホテルでスイートルームを歩き回っていた。「リゾテック沖縄国際IT見本市」で、アバター体験をした時のことである。距離や肉体の概念から自由になり、瞬間移動する。まるでドラえもんの「どこでもドア」のようだ。観光だけでなく医療や教育現場、買い物やスポーツなど、人間のあらゆる生活シーンに活用する事で、世界が大きく変わるのだとワクワクした。

リゾテック(ResorTech)は、「リゾート」と「テクノロジー」を掛け合わせた造語。「観光産業をテクノロジーで支え、世界最高峰のリゾート地を目指し、沖縄を豊かにする」ことを表すコンセプトワードで、沖縄経済同友会情報通信委員長の花牟礼真一氏が提唱した。県やISCO、多くの業界関係者の尽力で最速の開催となったのは、沖縄の成長戦略にとって、この概念が必要不可欠のものであると広く認識された証左だと思う。

見本市では、南紀白浜エリアで実証実験中の顔認証によるおもてなしサービスや5G(第5世代移動通信システム)、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)など先端技術の体験もでき、人工知能による来客予測で生産性の向上を図り、顧客の消費単価を押し上げるシステムや、音声でストレス状態を判断し、離職予防に活用できるシステム、人の移動手段を大きく変えるMaaS(次世代交通システム)アプリなど、興味深い多くの製品・サービスが出展された。また、「沖縄スタートアップフェスタ」が同時開催されたことも相乗効果を生み、見本市の熱量も更に上がったように思う。

現在、私達は新型肺炎による打撃に見舞われている。日本経済への深刻な影響が懸念され、都内では東京五輪に向けて推奨されていたテレワークを、感染拡大防止の為に多くの企業が前倒ししている。人の移動が委縮している今だからこそ、リゾテックで示された先端技術の数々をいかに活用するか、智慧と行動力が私達に求められている。停滞の時にこそ、次のジャンプに備えて筋力を付けなければならない。

花牟礼氏が描く「2039年の未来予想図」の中で、沖縄は世界一のリゾート地となり、観光産業は2兆円規模に成長、県民所得も大きく伸長する。この未来予想図は必ず実現すると私は思う。10月には本開催と合わせて、「ツーリズムEXPOジャパン」が初の沖縄開催となる。2039年には、リゾテック見本市がCES(米国で毎年開催される世界的な巨大テクノロジー見本市)級のイベントに成長しているのも夢ではないかも知れない。

新聞コラム第10回目 「地域の守り手」再認識

沖縄タイムスニュースナビプラスのコラムをアップするのを忘れていました。

年明け早々に沖縄県内で発生した豚コレラ(CSF)は、多くの関係者の尽力で収束したものの、その後もまた小規模のものが発生しては、自衛隊や建設業界も迅速な出動で防疫に協力しています。10回目のコラムは防疫を「陰で支える守り手」に焦点を当てました。

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沖縄タイムス ニュースナビプラス 2020年1月29日掲載

「建設業界、豚コレラ対応に尽力―地域の守り手再認識」

県内中部で発生したCSFの対応に、多くの関係者が昼夜を問わず尽力された。所管の行政や業界関係者以外でも、多くの機関・団体が被害拡大の防止・収束に向けて最優先の対応を行い、リソースを投入したことに焦点を当てると同時に、沖縄の主要産業の建設業の役割と課題について述べる。
陸上自衛隊第15旅団は県の災害派遣要請を受け、全7養豚場で9千頭余に上る豚の殺処分や埋却作業支援などに24時間態勢で当たり、撤収までの間に延べ約6500人を動員した。
建設業と関連業界が陰で果たした役割も大きかった。県建設業協会と県は「防疫協定」を締結しており、今回のCSF感染は協定締結後初めての対応となる。殺処分から72時間内に埋却することが非常に重要で、埋却地の確保・決定が遅れた場合、掘削に要する時間がその後の対応に大きく影響を与える。同協会は各関係機関と連携を図り、24時間態勢で埋却溝など計7か所の工事を行った。
また、殺処分された豚の搬送、消毒、埋設など、着手から作業完了までに103社、延べ750人の建設業関係者が防疫措置に携わった。不足する重機や照明、運搬車両の確保には日本建設機械レンタル協会や沖縄県トラック協会などの関連業界が尽力した。
建設業は、きつい仕事として敬遠される向きもあるが、「社会資本の整備の担い手」であると同時に、国土保全に必要不可欠な「地域の守り手」として人々の安全で安心な暮らしを支える尊い職業だ。昨年の相次ぐ台風がもたらした全国各地の甚大な被害へも、災害協定に基づき多くの建設業従事者が応急・復旧作業に重要な役割を担ったことは記憶に新しい。
建設業は地域の経済・雇用を支える主体でもある。都道府県内総生産に占める建設業の割合の全国平均値は6.3%だが沖縄では11・6%と大きく上回る。県経済へのインパクトが大きいだけに、業界の人手不足は深刻な課題であり、生産性の向上が急がれる。
国土交通省によると、全国の建設業就業者数は約500万人で、ピーク時から約27%減少している。災害列島とも言われる日本の「防災・減災・国土強靭化」が急務な中、担い手不足は深刻な影響をもたらしかねない。昨年には「新・担い手3法」が可決・成立し、国・行政・業界をあげて賃金水準の向上や女性活躍、休日拡大等による働き方改革や、生産性向上を目指す「i‐Construction」の推進が加速する。
今回のCSF対応をきっかけに、建設業の担う役割の多さと重要性が再認識され、課題解決への議論が進むことに期待したい。

2020 謹賀新年

明けましておめでとうございます。

2020年が皆さまにとって、素晴らしい年となりますように。

昨年の今頃は、私は高田馬場で髪を振り乱しながらWBSの修論執筆に追われていたっけ。既に遠い昔のことのよう。

今年は恒例の屋部寺にお詣り。ここに来るとホッとします。

 

世の中が平和で豊かでありますように。

調和と和合で満たされますように。

私の大切な人たちが心身ともに健やかでありますように。

 

「かぎやで風(かじゃでぃふう)」より

今日の誇らしゃや 何にぎやな譬てる

(きゆ ぬ ふくらしゃ や なう に じゃな たてぃる)

莟で居る花の 露行逢た如

(つぃぶでぃ うる はな ぬ つぃゆ ちゃた ぐとぅ)

歌意:今日の喜びを何にたとえる事ができるだろう。
まるで蕾の花が朝露に出逢い ぱっと咲き開いたような心持ちだ。

※「かぎやで風」は、沖縄本島で、祝宴の座開きとして踊られる祝儀舞踊です

新聞コラム第9回目 食品ロス削減推進法施行 消費者の意識改革必要

食品ロス削減は、SDGs(持続可能な開発目標)の「つくる責任 つかう責任」に位置付けられ、持続可能な消費と生産の具体的な指針が定められている。

2016年度の日本の食品ロス643万㌧。廃棄の出どころは、家庭(消費者)が約半分の45%、事業者が55%。事業者のうち外食産業で20%(203万㌧)もの食品が廃棄されている。愛知工業大学の小林富雄教授によると、食品のサプライチェーンの中で廃棄が発生する根本的な原因は、メーカーや卸売り、小売り、外食産業などの各プレーヤーが、消費者の要望に応えるプロセスの中で、「リスクを回避する行動」を取ることにある。リスクは大きく三つ。欠品により販売機会を失う「在庫リスク」。見切り販売を繰り返すことで値下げが常態化する「価格リスク」。賞味期限や消費期限に関わる「鮮度リスク」である。

買い物する際に、1日でも賞味期限が長い、棚の奥の商品を取り出した経験はないだろうか? 食品の鮮度に敏感と評される日本の消費者行動と「お客さまは神様」を旨とする提供者側の商取引の概念が、いわゆる「3分の1ルール」を定着させてきたといえる。このルールも緩和の動きが出てきており、さらに加速させるためには、消費者の意識改革と購入の前段階で起きている食品ロス削減に当事者意識を持つことが必要だ。

外食産業の消費現場で各地に広がりを見せる「30・10(さんまる・いちまる)運動」の発祥の地、長野県松本市では、推進店・事業所認定制度を設け、食べ残しの持ち帰りに対応する飲食店にお墨付きを与えるなど市を挙げて取り組んでいる。京都市では「しまつのこころ条例」を定め、飲食店業者に対して、利用者が自らの責任で食べ残しの持ち帰りを希望した場合、衛生管理上支障がない限り認める努力を促す。

飲食店にとって、食べ残しの「持ち帰り」を了とすることは、同時に安全衛生上の責任を負う懸念が起こり得る。免責制度などがあれば、動きは広がるかもしれない。そのためには法的な整備も視野に行政、業界、消費者が共通認識を持つことが重要だ。

食品ロス削減推進法には、製造者等によるフードバンクへの寄付で生じる責任について、その在り方に関する調査及び検討を行うとする条文も盛り込まれた。小売りや飲食店と消費者をつなぎ、食品廃棄を抑制するプラットフォーム型のフードシェアリングサービスも広がりつつある。

SDGsが目指す貧困、飢餓ゼロの実現には、私たち消費者の小さな行動の積み重ねが必要だ。おいしく食べきり、よき年末年始を迎えよう。

 

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新聞コラム第8回目 新たな観光総合指標 量から「質」へ議論期待

観光収入や1人当たり消費額など県の正確な統計は当然ながら、「量より質」に関心を示す業界関係者は多い。観光の量と質の議論を深め、従来の調査項目の細分化や手法・回数を見直し、新たな総合指標の設定を検討してはどうか。

数字は沖縄観光の恩恵を可視化できる重要なツールだ。より一層質の向上を追求するならば、これまで以上に正確な数字へのこだわりが必要となる。量と質のバランスをどのような規模感とスピードで求めていくかを県、自治体、業界、県民が共有するべきだ。

入域観光客数が1千万人を超えていたとはいえ、県内ホテルで稼働率が軒並み上がったという話は聞こえてこない。宿泊施設の増加により顧客の分散化が進むが、分析に必要な数字を得にくいのが実情だ。県の「宿泊施設実態調査」では、施設数や客室数を種類別に見られるが、それに民泊は含まれない。急増する民泊施設には「アパートメントホテル」と呼ばれる中~大規模施設も台頭している。今後は宿泊施設数の統計に「民泊」も含めないと数字を見誤るのではないか。宿泊先の多様化と分散化を明確な数値で把握することは、事業者のマーケティングや戦略立案にも重要な意味を持つ。

一方で、「観光産業実態調査」では、対象8業種の宿泊サービスに民泊も含まれる。調査項目は1事業者当たりの従業員数や平均月額給与、DI数値等が網羅されていて興味深いが、調査の回収目標件数が200件で、県内従事者の全体像を把握するにはサンプル数が少な過ぎる。

名桜大学の大谷健太郎上級准教授によると、観光の本来の目的は住民生活の質を高めることにあるが、経済効果を実感できるまでにはタイムラグが生じる。高騰する人件費の上昇賃金に県内企業の体力が追い付かない側面もあり、実際にどれくらい影響しているのか、従事者は豊かさを実感できているのか等、観光雇用による経済波及を測り、推移を蓄積していくデータがほしい。

観光客の満足度調査は充実しているが、地域住民や事業者の満足度の把握も重要だ。県が年4回実施する観光統計実態調査を毎月行い、手法もデジタルマーケティングを活用する等、スピードとサンプル数の両方の追求が望ましい。

ハワイ州政府観光局の2018年訪問者調査レポートは、質を重視するハワイらしく観光収入と1人1日当たりの消費額をメインとする。島ごとの詳細な調査もある。沖縄観光が質をより重視するならば、統計の切り口や優先順位の見直しの議論が深まることに期待したい。

 

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新聞コラム第7回目「1万人豊か」実現期待

県内の若手経営者らが設立した「SCOM(エスコン)」は、一般的なベンチャーキャピタルや大手ファンドとの大きな違いが三つある。まずはビジョンだ。沖縄の中小零細企業に現代的経営を導入して持続的に利益を出し、社員や社会に還元するスモールビジネス群の創出を通じ、「低賃金」「貧困」「進学率」「離婚率」などの社会課題解決を図る。「10年でより良い経営ができる会社を100社生み出し、5千人の従業員所得を引き上げ、1万人の生活を豊かにする」という具体的な目的を持つ。

次にその手法。投資先企業へのハンズオン支援(経営支援)を行うが、その機動力と実戦力、スピードに期待が持てる。経営者が本業に集中できるよう「実戦」に関与し、ビジネスの基本フレームから成長・財務・事業戦略の策定と運用に関わりPDCAをまわす。

3人の設立者は、それぞれが異なる業界の最前線で活躍するプロフェッショナルだ。藤本和之氏の琉球オフィスサービスは、経営情報を一元管理し、サブスクリプションモデルの利益率を改善し続けるサービス企業。比嘉良寛氏のPaykeは観光市場を捉え世界を相手にビジネスを行い、顧客にデータビジネスを提供するIT企業。上間喜壽氏の上間フードアンドライフはIT化で飲食業の経営効率化を図り、さらにコンサルティングやクラウドサービスを提供するなど事業の多角化を図る。彼ら自身がスモールビジネスの困難を乗り越え、企業を成長させてきた実績を持つ。身銭を切って株主となり、投資先と利害関係を一致させて共にリスクを取る本気のコミットメントの上に行われる支援は、経営者のペインに寄り添ったものとなるだろう。

最後に収益モデル。一般的なベンチャーキャピタル等と違い、投資先企業の上場益を狙わず、中長期視点で成長させた企業経営者による株式の買い戻しを通じた譲渡益を目指す。出資を受ける企業からは、資本調達コストが割高に感じられるかもしれないが、支援により収益力が向上すれば企業価値も増加する。自己株買いをしても安定的な高い収益力を維持できる経営改革が期待されるため、長期的なメリットは大きいだろう。投資先企業が大きく飛躍し、さらに投資先企業が増え、沖縄の1万人を豊かにするビジョンの早期実現に期待が膨らむ。

今後は、SCOMの支援を希望する中小零細企業が急増した場合、そのニーズを満たす資金力とハンズオン支援のマンパワー確保が運営上の課題となろう。ファンドそのものの持続性のためにも、彼らのビジョンに共感し参画する仲間を増やす事が重要と考える。

沖縄タイムス・ニュースナビプラス

新聞コラム6回目「ワーケーション 地域に活気」

テレワークが広く導入されるようになり、働き方の多様化が進む中で注目されているのが「ワーケーション」だ。ワーケーションとは「仕事(work)」と「休暇(vacation)」を組み合わせた造語で、リゾートや地方・帰省先等で休暇を楽しみながら働くことをいう。働き方改革は休み方改革でもある。ワーケーションによる仕事は生産性が向上し、創造的な発想が期待されるとして、大手航空会社や旅行会社、IT企業等が社内制度として導入し成果を上げている。

リゾート地を抱える自治体にとっては、ワーケーションの誘致は長期滞在による経済効果や関係人口の増加も見込め、地方創生につながると期待されている。全国各地でサテライトオフィスの誘致活動やコワーキングスペースの設置が進んでおり、中でも和歌山県白浜町は先進地として特に注目を集める。官民挙げた国内外のIT企業誘致の取り組みが成功する同町では、南紀白浜空港を基軸に地域のホテルや商業・観光施設、自治体、観光協会等が連携し、これに進出企業とのコラボレーションが加わり、最先端の技術力をいかしたイノベーティブな取り組みが地域の活性化を加速させている。例えば、「IoTおもてなしサービス実証」では、顔認証技術を使った「手ぶら」「顔パス」「キャッシュレス」で南紀白浜地区の様々なサービスを利用できる仕組みの実証実験が進む。

和歌山県の担当者のレポートによると、ワーケーションの成功に必要な要素は3つある。1つは、その地域にワーケーションに必要な施設・設備があること。宿泊施設と仕事場所、通信環境、交通手段等ハードの整備が欠かせない。2つめに、地域特有の魅力(人、観光、自然等)があること。ハード面だけならば、都会の方が圧倒的に利便性は高い。地方でワーケーションをする意義を提供するには、地域ならではのコンテンツと差別化が必要となる。3つめはワーケーションを推進する主体があること。和歌山県では県庁内に「ワーケーション・コンシェルジュ」を設置し、強いリーダーシップを発揮している。

ワーケーション誘致に必要な3つの要素に対する沖縄のポテンシャルは高い。定番の地となれば関係人口も拡大し、最新技術や知見を持つ企業の進出を誘発し、沖縄が知の集積地ともなり得る。現時点では内閣府沖縄総合事務局と一部自治体が、ワーケーション誘致に取り組んでおり、県内各地で民間によるコワーキングスペースの整備も増加中だ。弊社でも内閣府の沖縄振興特定事業推進費民間補助金の交付を受け、名護市内の自社ホテルロビーにコワーキングスペースを整備中だ。これは、来訪するビジネス客の利便性を高めるだけでなく、ワーケーションを喚起すると同時に地元コミュニティと来訪者のつながりを創出することに意義を見出してのことだ。

沖縄での滞在時間増加と経済効果につながるワーケーション誘致・推進には、県を筆頭にワンストップ窓口を設けることが望ましいと筆者は考える。県と地方自治体、産業界がタッグを組み、積極的な環境整備と情報発信、誘致を推進する体制の確立に期待する。

沖縄タイムス・ニュースナビプラス

 

新聞コラム5回目「離島でのテレワーカー育成 地方活性と担い手期待」

・・・新聞コラムをアップするのをすっかり忘れていましたが、明日には6回目が掲載されるので思い出した次第。

おまけに「ドメイン更新料を払ってね」と管理会社から通知が来ました。ほとんど休眠状態なのにお金は出ていく。猛省。。。

 

「離島でのテレワーカー育成 地方活性と担い手期待」

テレワークとは、ICT(情報通信技術)を利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方のこと。国が推進する働き方改革実現の切り札とも位置付けられ、国民運動プロジェクト「テレワークデイズ2019」が9月6日まで開催されている。20年東京オリンピック・パラリンピック大会開催時の交通混雑緩和を図る狙いがあるが、最も大きな目的は、テレワークを活用した柔軟な働き方により生産性の向上や多様な人材の能力発揮を拡大することにある。

技術革新と少子高齢化により変化を迫られる日本の労働市場で、テレワークは企業、就業者、社会の3方向にメリットをもたらすとされる。企業にとっては生産性の向上や優秀な人材の確保・離職抑止など。就業者はワークライフバランスの改善、仕事と育児・介護・治療の両立や学び直しの時間の確保など。社会にとっては労働力人口の確保や地域活性化など地方創生の観点からも期待される。

沖縄県の「離島テレワーク人材育成補助事業」は、複数の離島に支援体制を構築し、島外から仕事を取り込む環境を整備・加速化するもの。育成されるテレワーカーは副業による副収入の増加が見込め、技術・能力の向上を図れば、離島にいながら高単価の業務の受注増や高水準の待遇も期待できる。また、コワーキングスペースの整備・拡充が進むことで、都会のテレワーカーやオンライン仲介で働くフリーランス就業者、企業誘致にもつながる可能性が高まる。

18年度版経済財政白書によると、日本では情報処理・通信に関わるIT人材の割合がIT企業に集中しており、それ以外の企業に専門家が少ないため、企業経営におけるIT活用の阻害要因になっている可能性があるという。
テレワーカーの育成は、企業に不足するIT人材の確保にも寄与すると同時に、場所にとらわれない働き方が人手不足の解消と地方の活性化の鍵を握るといえる。

テレワークがもたらすもう一つの可能性に、「関係人口」の増加がある。移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々のことだ。テレワークを通して長く滞在し、地域と交流やつながりを深めた地域外の人材が、社会課題解決の糸口や地域づくりの担い手になることも期待できる。

昨年度より、沖縄総合事務局が県外企業の長期滞在型テレワークの誘致及び導入の実証実験に取り組み、参加企業から高評価を受けている。今年は『ツール・ド・おきなわ』+『テレワーク』の新しい試みも予定されており、地域特性やイベントを生かした相乗効果に大いに期待したい。

 

沖縄タイムス・ニュースナビプラス

 

新聞コラム4回目「社会人のリカレント教育」

2018年度版経済財政白書において、リカレント教育の重要性と具体的効果の分析結果が示されている。

白書によれば、学び直しの大きな意義は2つある。1つは「人生の再設計」が可能になること。2つめはAI(人工知能)などの技術革新に対応したスキルや、機械に代替されにくい能力を身に付けることである。

「学び直し」の方法は、大学等での勉学に専念する方法、通信教育やオンライン講座の受講、セミナー参加や書籍による独学など様々である。いずれの方法にせよ、政府が数年に渡って行った追跡調査結果によると、学び直しを行った人は、行わなかった人に比べて、年収が10万円~16万円近く上昇。また、職業に就いていない人が学び直しを行った場合には、そうでない人に比べて就業確率が10%~14%程度上昇する効果が見られたという。

だが、リカレント教育の前向きな効果が確認されているにもかかわらず、日本では学び直しを実践している人の割合は少なく、25~64歳の大学等での再教育については、OECD(経済協力開発機構)諸国で比較すると、平均の11%に比べて日本は2.4%と大きく下回っている。その要因として、日本では労働時間が長く学習時間が確保できないことや、学び直しの成果が企業の処遇に適切に反映されていないこと、大学等のカリキュラムと社会人のニーズのミスマッチ等があり、今後の課題とされている。

筆者は昨年、MBA取得のため東京のビジネススクールで1年間の学び直しに挑戦した。経営理論や最新知識を学び、学位を取得するという本来の目的以外にも、多くの収穫を得ることが出来た。

たとえば、固定概念の枠を外すこと。長年仕事をしていると、いつしか所属する企業や業界の常識に捉われ、小さな物差しで物事を判断しがちだ。別世界に自らを置き、多様なバックボーンを持つ人達と議論を戦わせ、互いに吸収しあう体験は、複眼的な新しい視座を与えてくれる。

また、一度社会に出て様々な経験をした後での学びだからこそ、より理解が深まる側面や新しい気づきもある。

それらを通して自らの市場価値や、企業の社会的価値について再考するきっかけを得ることも出来る。環境変化のスピードが加速する現在、常に自らと企業の能力を正しく判断することは、適切な経営資源の配分や組織の布陣にも直結すると思う。

学び直しの場で、利害関係なく絆を築けた新しい友人達は、忌憚なく意見し合える社外メンターという大きな宝物だ。

学び直しに挑戦する前と終えた後で、筆者は今、同じ言葉を噛締めている。

「明日死ぬと思って生きなさい、永遠に生きると思って学びなさい」(マハトマ・ガンジー)

 

2019.8.7沖縄タイムス ニュースナビプラス