新聞コラム第8回目 新たな観光総合指標 量から「質」へ議論期待

観光収入や1人当たり消費額など県の正確な統計は当然ながら、「量より質」に関心を示す業界関係者は多い。観光の量と質の議論を深め、従来の調査項目の細分化や手法・回数を見直し、新たな総合指標の設定を検討してはどうか。

数字は沖縄観光の恩恵を可視化できる重要なツールだ。より一層質の向上を追求するならば、これまで以上に正確な数字へのこだわりが必要となる。量と質のバランスをどのような規模感とスピードで求めていくかを県、自治体、業界、県民が共有するべきだ。

入域観光客数が1千万人を超えていたとはいえ、県内ホテルで稼働率が軒並み上がったという話は聞こえてこない。宿泊施設の増加により顧客の分散化が進むが、分析に必要な数字を得にくいのが実情だ。県の「宿泊施設実態調査」では、施設数や客室数を種類別に見られるが、それに民泊は含まれない。急増する民泊施設には「アパートメントホテル」と呼ばれる中~大規模施設も台頭している。今後は宿泊施設数の統計に「民泊」も含めないと数字を見誤るのではないか。宿泊先の多様化と分散化を明確な数値で把握することは、事業者のマーケティングや戦略立案にも重要な意味を持つ。

一方で、「観光産業実態調査」では、対象8業種の宿泊サービスに民泊も含まれる。調査項目は1事業者当たりの従業員数や平均月額給与、DI数値等が網羅されていて興味深いが、調査の回収目標件数が200件で、県内従事者の全体像を把握するにはサンプル数が少な過ぎる。

名桜大学の大谷健太郎上級准教授によると、観光の本来の目的は住民生活の質を高めることにあるが、経済効果を実感できるまでにはタイムラグが生じる。高騰する人件費の上昇賃金に県内企業の体力が追い付かない側面もあり、実際にどれくらい影響しているのか、従事者は豊かさを実感できているのか等、観光雇用による経済波及を測り、推移を蓄積していくデータがほしい。

観光客の満足度調査は充実しているが、地域住民や事業者の満足度の把握も重要だ。県が年4回実施する観光統計実態調査を毎月行い、手法もデジタルマーケティングを活用する等、スピードとサンプル数の両方の追求が望ましい。

ハワイ州政府観光局の2018年訪問者調査レポートは、質を重視するハワイらしく観光収入と1人1日当たりの消費額をメインとする。島ごとの詳細な調査もある。沖縄観光が質をより重視するならば、統計の切り口や優先順位の見直しの議論が深まることに期待したい。

 

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新聞コラム第7回目「1万人豊か」実現期待

県内の若手経営者らが設立した「SCOM(エスコン)」は、一般的なベンチャーキャピタルや大手ファンドとの大きな違いが三つある。まずはビジョンだ。沖縄の中小零細企業に現代的経営を導入して持続的に利益を出し、社員や社会に還元するスモールビジネス群の創出を通じ、「低賃金」「貧困」「進学率」「離婚率」などの社会課題解決を図る。「10年でより良い経営ができる会社を100社生み出し、5千人の従業員所得を引き上げ、1万人の生活を豊かにする」という具体的な目的を持つ。

次にその手法。投資先企業へのハンズオン支援(経営支援)を行うが、その機動力と実戦力、スピードに期待が持てる。経営者が本業に集中できるよう「実戦」に関与し、ビジネスの基本フレームから成長・財務・事業戦略の策定と運用に関わりPDCAをまわす。

3人の設立者は、それぞれが異なる業界の最前線で活躍するプロフェッショナルだ。藤本和之氏の琉球オフィスサービスは、経営情報を一元管理し、サブスクリプションモデルの利益率を改善し続けるサービス企業。比嘉良寛氏のPaykeは観光市場を捉え世界を相手にビジネスを行い、顧客にデータビジネスを提供するIT企業。上間喜壽氏の上間フードアンドライフはIT化で飲食業の経営効率化を図り、さらにコンサルティングやクラウドサービスを提供するなど事業の多角化を図る。彼ら自身がスモールビジネスの困難を乗り越え、企業を成長させてきた実績を持つ。身銭を切って株主となり、投資先と利害関係を一致させて共にリスクを取る本気のコミットメントの上に行われる支援は、経営者のペインに寄り添ったものとなるだろう。

最後に収益モデル。一般的なベンチャーキャピタル等と違い、投資先企業の上場益を狙わず、中長期視点で成長させた企業経営者による株式の買い戻しを通じた譲渡益を目指す。出資を受ける企業からは、資本調達コストが割高に感じられるかもしれないが、支援により収益力が向上すれば企業価値も増加する。自己株買いをしても安定的な高い収益力を維持できる経営改革が期待されるため、長期的なメリットは大きいだろう。投資先企業が大きく飛躍し、さらに投資先企業が増え、沖縄の1万人を豊かにするビジョンの早期実現に期待が膨らむ。

今後は、SCOMの支援を希望する中小零細企業が急増した場合、そのニーズを満たす資金力とハンズオン支援のマンパワー確保が運営上の課題となろう。ファンドそのものの持続性のためにも、彼らのビジョンに共感し参画する仲間を増やす事が重要と考える。

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