新聞コラム4回目「社会人のリカレント教育」

2018年度版経済財政白書において、リカレント教育の重要性と具体的効果の分析結果が示されている。

白書によれば、学び直しの大きな意義は2つある。1つは「人生の再設計」が可能になること。2つめはAI(人工知能)などの技術革新に対応したスキルや、機械に代替されにくい能力を身に付けることである。

「学び直し」の方法は、大学等での勉学に専念する方法、通信教育やオンライン講座の受講、セミナー参加や書籍による独学など様々である。いずれの方法にせよ、政府が数年に渡って行った追跡調査結果によると、学び直しを行った人は、行わなかった人に比べて、年収が10万円~16万円近く上昇。また、職業に就いていない人が学び直しを行った場合には、そうでない人に比べて就業確率が10%~14%程度上昇する効果が見られたという。

だが、リカレント教育の前向きな効果が確認されているにもかかわらず、日本では学び直しを実践している人の割合は少なく、25~64歳の大学等での再教育については、OECD(経済協力開発機構)諸国で比較すると、平均の11%に比べて日本は2.4%と大きく下回っている。その要因として、日本では労働時間が長く学習時間が確保できないことや、学び直しの成果が企業の処遇に適切に反映されていないこと、大学等のカリキュラムと社会人のニーズのミスマッチ等があり、今後の課題とされている。

筆者は昨年、MBA取得のため東京のビジネススクールで1年間の学び直しに挑戦した。経営理論や最新知識を学び、学位を取得するという本来の目的以外にも、多くの収穫を得ることが出来た。

たとえば、固定概念の枠を外すこと。長年仕事をしていると、いつしか所属する企業や業界の常識に捉われ、小さな物差しで物事を判断しがちだ。別世界に自らを置き、多様なバックボーンを持つ人達と議論を戦わせ、互いに吸収しあう体験は、複眼的な新しい視座を与えてくれる。

また、一度社会に出て様々な経験をした後での学びだからこそ、より理解が深まる側面や新しい気づきもある。

それらを通して自らの市場価値や、企業の社会的価値について再考するきっかけを得ることも出来る。環境変化のスピードが加速する現在、常に自らと企業の能力を正しく判断することは、適切な経営資源の配分や組織の布陣にも直結すると思う。

学び直しの場で、利害関係なく絆を築けた新しい友人達は、忌憚なく意見し合える社外メンターという大きな宝物だ。

学び直しに挑戦する前と終えた後で、筆者は今、同じ言葉を噛締めている。

「明日死ぬと思って生きなさい、永遠に生きると思って学びなさい」(マハトマ・ガンジー)

 

2019.8.7沖縄タイムス ニュースナビプラス